海の男の判断 トローリング 2008年06月07日 トーナメントの朝は早い。 ホテルを出ると予報通りの雨模様。悪いことに風も強くなってきている。 得てしてこういう悪い予報というものは良く当たるものだと苦笑いをしながら船へと急ぐ。 港に着くとクルー達が慌しく出航の準備を始める。僕もトーナメントフラッグをフライブリッジの上にあるマリンVHFのアンテナに括り付ける。風が強くて怖い。振り落とされそうになりながらどうにか括り付けると、他の出港準備も大方終わっていた。 5時過ぎに出港。一路北へ。 港の中は静かだった海が、港を一歩出ると途端に厳しい表情を見せる。激しく叩かれるボートのキャビンから不安そうに外を見ても、辺りはまだ暗くて何も見えない。レーダーが頼りだ。 6時を過ぎると更に風が強くなり、波も高くなった。おそらく3mは超えているだろう。キャビンの中に置いてあるクーラーボックスが暴れ始める。 クーラーボックスと体を何とか支えながら、今日一日はこんな状態が続くんだろうかと考えて憂鬱になってくる。 「お兄ちゃん、もう無理だから引き返そう」 キャプテンの平原さんが隣のお兄さんに話しかけた。お兄さんも「そうしよう」と短く返す。阿吽の呼吸だ。 或いは女性や僕の様な経験の浅いクルーがいなければ、判断が違ったかもしれない。けれどやめる判断をするのもキャプテンの大切な仕事だ。 6時12分転針。 更に強くなった風と高くなった波の洗礼を受けながら、港を目指す。 時折横波を受けて本当にヒヤリとすることもあった。 ほうほうの態で港へ逃げ帰ったサンダンスエミリーⅢとクルー達は、船を舫ってやっと人心地付いた。 釣りにならなくてもビールで乾杯。 無事に帰ってこれたことを感謝。 明日の豊漁を祈って乾杯。 みんなの顔に笑顔が戻った。 PR